第四話

2/2

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「ただいまー」 「はーやっと我が家だー」 おやすみ。 おつかれさん。 「おやすみー」 「明日遅刻するなよ」 隣の部屋に入って行った二人を見送った。 部屋の扉を閉めると深呼吸をした。 「やっぱりこの匂いだ」 「匂い?臭いか?」 「違う、俺んちの匂いー」 何の匂いだ?という恭平。 俺は真直ぐ風呂場に行き、それを手にした。 「ジャン、俺たちのにおいの元」 手にしたのは有名メーカの柔軟剤だった。 「はは、洗濯はずっとお前の係だもんな」 「ちがう!」 と俺は口をとがらせた、この柔軟剤を使うのは俺と恭平だけ、ほかの奴らとは一緒に洗ったことがないもん。 「順平も別、だから俺は匂いでわかったの!」 「あ、それ俺も思った、なんか違うってそれか」 それカッていうけど、大事なのと俺は笑いながら言ったんだ。 女子リョク高いよなと言うとあの大きな手が俺の頭をなでた。 そして抱きしめられ、助けてくれてありがとうと言う声がした。 大きなベッドに二人もぐりこんだ、やっと自分のベッドだと思ったら、すぐに眠ってしまった。 真っ白な部屋だ。 おかしいな?眠ったはずなのに…? そこには大きなベッド。 あれ?俺ねてたよな? 膨らんだ布団の中には恭平がいると思っていた。 いつものように、ベッドの左側から体を滑り込ませた。 ひやっとした。 濡れているのではないが、冷たい、いつまでたっても温まってこない。 俺は隣の恭平の方を見た。 いつもなら奴の顔が見えるのに、布団の中にもぐっている? 俺はその中を探るように布団の中に入った。 真黒な中に誰かがいる。 恭平? 丸まった背中に声をかけて見た。 「おかえり」 そう言ったのは、夢の中で見たしらない男。 俺はびっくりして布団の中から飛び出た。 「おきた?」 「ナースコール、ナースコール」 「こ、ここは?」 「ここ?病院、大丈夫?まだ動けないのに、あるいちゃだめだよ」 パジャマ姿の男性達、覗き込む人は、足をけがしているのか、ガラガラと何かに体を預け歩いている。 パタパタと音がして紺色の半袖シャツと薄いブルーのパンツを履いた女性が入ってきた。 「野島由紀夫さん、わかりますか?」 「…わかりません」 「これ何かわかりますか?」 何かを出して見せてくれた? 「体温計ですか?」 「そうね、熱を測ってくれますか?」 伸ばした右手には、白い四角い物が貼ってる。 「これは?」 「剥がさないでね、傷に貼ってるから」 傷? 「気分はどう?」 最悪です。 彼女は、背中に麻酔がついていること、しばらくしたら先生が来てそれを外してくれるし主治医の先生が来てくれるという。 「あのー、俺はどうしてここに?そうだ、仲間は?俺以外の人は?」 「いいえ、おひとりですよ、会社の方には連絡しましたから」 「会社?あれ、警察は?」 警察?ああ、女性のマネージャーさんが話してましたね、もう来ないんじゃないかな?と言っている。 また夢か? 「あの」 「ああ飲み物ですね、これでいいですか?」 置かれていたペットボトルのお茶、キャップを外してくれた。 ストローを指してくれた、そして俺はやっとどんな現状なのか見ることとなる。 お茶、ウメー。 「あの足はついてますよね」 「ついてますよ、見られますか?」 見せてくれた先には固定された足がつりあげられていた。 「複雑骨折ですからね、当分このままです、まったく、よく外に出られましたね、今度は外しちゃだめですよ」 左腕はひびが入っていてこっちも固定してある。 女性が出ていった。 カーテンは半分あいている、でもさっき見えた、ここは大部屋、複数人いる。 男性二人がひょこっとのぞいた。 「あのさ、間違ってたらごめんね、君、ソウルドアウトのゆっきーだよね」 「なんだか夢の中にいるみたいで、俺そうなのかな?」 やっぱりそうだというもう一人の男性がサインをくれとノートを持ってきた。 あっているかもわからないサインをしてやると喜んでいた。 その二人に俺は質問を投げかけた。 一人は隣、カーテンを開け、もう一人は椅子に座った。 その奥は扉がないのか開け放たられ人が行きかうのが見えている。 個室?この病院にはないよ。 無いわけじゃないが、個室は感染病なんかの患者で、救急病院であるここはある程度動けるようになると病院を変わってもらうようになるんだそうだ。 ドアは無くて、常に人が出入りするから、隣にいた人が次の日違う人、なんていうのはざらなんだそう。 じゃあ個室にいたのは夢なんだ。 「何で俺ここにいるのかな?」 二人は覚えてないの?という。 何も覚えていないような気がする。 隣の子が、スマホを出した。 「あんたが運ばれてきた日に起きたんだ」 彼はそれを見せてくれた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加