第一話

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第一話

だるい身体とぼーっとした頭、目までが蜃気楼のように視界をゆがませている。 まるで迷路、白い四角い中を歩いている。 ここは廊下だろうか?裸足で歩く音がペタペタと響いている。 横から出てきた人とすれ違う。 こいつ誰だっけ? 少し歩くとまた出てきた、ニヤニヤ笑っている奴。 何かいいことでもあったのだろうか? 男が出て来たところを覗いた。 真っ白い部屋だ。 何にもない、ただのワンルーム。 何かわからないけど、ここにいたらダメだと思う。けど足が思うように前に行かない、入っちゃダメなんだ。 壁も何もかも白くて、なんでワンルームなのかもわからないままポカーンと口を開け見ている。 手をこの白い物に着いたら吸い込まれてしまうようで、踏ん張ってたっているのに気が付き、一歩下がった。 又前に人が出てきた、三人目も男、右側から出てきて、部屋を探すように左側の部屋へと入った。 ダメだそっちに行っちゃ。 その男が入って行った部屋、男を追いかけた、なんでダメなんだろう? 五分前、準備できたか? 何のことだ? 壁?目の前にはドアではなくて、真っ白い壁。壁に自分の手のひらを当てようと伸ばした、肌色が白い壁に色を付ける、なぜか異様にみえた。 ずぶずぶと音を立てその壁に手が入って行く。 ずるりと体が抜けるとそこには… 何だろう、ここはどこなんだ? 真っ白い箱の中? さっきの場所より圧迫感を感じるのは何でだ? もっと狭い部屋。 恐怖を感じた。 今入ってきた壁に手を当てるがもう外へ出ることはできない。 焦り始め、壁を叩きだした。 「誰だ?」 その声に振り返った。 今まで何もなかった場所には大きな白いもの、ベッドだ、ベッドが一つ現れた。 その上に二人の男がいる。 いい男、美形、モデル?芸能人?綺麗な顔の男が体を起こした、俺を見てびっくりしたような顔をした。 頭の中をいろんな言葉が駆け巡る。 ここにいちゃいけない! 壁を叩きまくった、出口はどこだ!出せ! ずぶりと体が壁に入り込んだ、今度はどこだ? 二分前だ、早く! だから、何なんだよ! 目を凝らすように見る。 階段? 踊り場だろうか、真っ白でわからないが、階段があるのはわかるような気がした、上、下どっちに行けばいい? 手すりのようなものを掴み、上へ行く階段を一歩あがった。 人のざわめくような音、声、いろんな音が聞こえると急に目の前がぼんやりと色づき始め、今たっている場所が階段の踊り場なんだというのがわかった。 だんだんと白から靄のような霞んでいる色の世界がだんだん色づいてきた。登って行くとだんだん音が大きくなり、景色もはっきりとしてきた。 出た先は長い廊下と目の前にあるのは店? お菓子やギフトの箱がある、本や弁当、コンビニかな? 辺りを見回すとちゃんとした人間がいる、女の人も子供も、そこに男性が現れ声をかけてきた。 「よっ」 軽く声をかけてきた。 「部屋でて大丈夫なのか?」 この人は誰だ?何を心配してくれているのだろうか? 男は、寒くない、裸足で出てきたの?と言っているが… 何の事だか… ズキン! 頭に痛みが走って手を上げた。 手には白い物がついていて自分の手の甲しか見えない、なんだこれ? ズキン! そのまま頭を押さえると足からガクンと落ちるような感覚になった。 「おい、おいちょっと!誰か―!」 嫌だ、目はつむりたくはないのに・・・瞼が落ち、目の前は真っ暗になった。 アハハハ… 笑い声が聞こえる。 天井だろうか、丸い小さな穴がいっぱい開いた板が張られた白い天井の中に、灰色の四角い物体から風が出ているのがわかる。その下にあるカーテンが揺れているからだ。 横を向くと真っ青な空が飛び込んできた。 空?ここはどこだ? 「起きた?」 パジャマ姿の男性ふたり。 「ナースコール、ナースコール」 覗き込む人は、足をけがしているのか、ガラガラと何かに体を預け歩いている。 部屋だ、確かに部屋、小さい部屋にしらない人がいる。 俺の頭の上に向かって、起きたよと言っている人は手をけがしているようだ。 パタパタと音がして紺色の半袖シャツと薄いブルーのパンツを履いた女性が入ってきた。 「野島由紀夫さん、わかりますか?」 野島?由紀夫? 返事が出来ないでいた。 「これ何かわかりますか?」 何かを出して見せてくれた、長いもの? 「え…鉛筆…?」 「あら、じゃあこれは?」 黒い四角いもの。 「電卓…」 「…眠くはない?」 「だるい…」 「眠って、その方が楽だから、森さん静かにね」 笑い声が聞こえる。 「俺だけかよ」 「またお願いできる?薬入れますよ、気分どうですか?」 顔を動かした。 「見張り?いいよ」 声が違う、男性が三人いる? 俺の目はまた閉じた。
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