8月10日(ご笑読御礼の物凄く下らないおまけ)

2/2
前へ
/4ページ
次へ
何度目かの青信号で、ハグ以上になってたハグがゆるんだ。 「じゃ、帰るか」 「え」  口から反射的に出た。 「『え』ってなんだ」 「ぅ」 「今日のところは、『っす』にしとけ」 「っす……」  よし、とか言って手を引かれて横断歩道を渡らされる。  渡ったらあとちょっとしか居られないんだけど。 「……き、なんだけど」 「は」 「もっと居たい」 「う」  なんか知らないけど、うろたえ始めた。  歩くのも止まってしまったので、私が引っ張ることにする。 「って、それは、ちょっと」 「いいじゃん。ハートの日なんでしょ」 「……これは、違う……」 「じゃあ何よ」  話してるうちに家に着いた。外扉を入る。エントランスの前のパネルに、鍵で触る。ガラスの扉が開いたから、一歩入って振り返る。  いつもなら、お互いここで手を振るところだ、けど。  どうするの。扉、閉まっちゃうよ。  手もはがさまるよと思っていたら、振り解かれた。  そうか。これが答えか。 「……お前、覚えてろよ……」 「やだ」  覚えてない。速攻忘れる。  自分から誘って引かれて振られた事なんか覚えてたい訳ない。  エレベーターを読んで床を見てたら、靴の先が目に入った。扉の境を越えている。  閉まりかけた扉のセンサーが反応して、もう一度開く。  顔を上げて靴の主を見る。  ……うわ。なんで。  めちゃくちゃ怒ってる。 「うっ」 「お前のせいで俺の努力は無駄になった」  デコピンすんな。努力ってなに。  デコピン下手で手を繋がれる。引っ張られるやつじゃなくて、恋人繋ぎだ。  顔がにやける。エレベーターに乗り込みながら、ぼそっとつぶやく声が聞こえた。 「8月10日は、野獣の日だぞ」    【たぶんへたれた野獣で終わる】 「どんな返事だー」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加