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6月21日(金)
昨夜は激しい発作が三度ほどあった。紺野は疲れ切ってぐったりと寝入っていたが、亨也の電話の声で目が覚めた。
「はい、申し訳ありません。明日の準備もありますし、今日は出勤は難しいと思います。はい、そうですね。よろしくお願いします。……はい、分かりました。では、失礼します」
電話を切った亨也は、紺野が目覚めたのに気づいてほほ笑みかけた。
「おや、起こしてしまいましたか? すみません」
「神代さん……お仕事、お休みされるんですか?」
亨也はうなずくと、ベッドサイドの椅子に腰掛ける。
「いろいろとやらなければいけないことがあって」
言いながら紺野の額に手を当てると、顔色を注意深く診て、心配そうな表情を浮かべた。
「昨夜は、きつかったでしょう」
紺野は疲れたような表情ではあったが、ほほ笑んだ。
「さすがに、少々……でも、大丈夫です。それより神代さんも、それに付き合ってくださって……寝ていないんじゃないですか?」
「やらなければならないことがあったんで、ちょうど良かったですよ」
亨也はそう言って笑うと、紺野に優しいまなざしを向ける。
「あと一日、頑張ってください。予定では、今日中にあちらの準備が整います。そうすれば、明日朝一であちらにとんで、始められますから。それまでの辛抱です」
「いろいろと、ありがとうございます」
紺野は頭を下げると上体を起こし、よろよろとベッドを降りた。
「朝食は……」
「ああ。準備しましたよ」
亨也はそう言うと恥ずかしそうに笑った。
「ただのご飯とみそ汁、焼き魚ですけど。料理上手の紺野さんに食べさせるのは、厳しいかな」
紺野はとんでもないとでも言いたげに頭を振ると、恐縮しきって頭を下げる。
「すみません、何から何まで……」
「何言ってるんですか、当たり前ですよ」
「片付けはしますから」
「やめてください、全く」
亨也は苦笑すると、さり気なく紺野を支えながらダイニングに向かった。
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