最終章

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 7月21日(日)  翌日も天気は文句なしの快晴。今日は遊覧船で芦ノ湖を一周する。人気がある乗り物だが、まだ午前中なのでそれほど待たされることもなく四人は乗船することができた。 「二階の甲板に行ってきたら? 今日は天気が良くて気持ちがよさそうよ」  船室の椅子に座り、一息ついたみどりが言った。 「え、じゃあおふくろ、あの階段上んの?」 「私はさすがに無理ね。あなたたちだけでも行ってらっしゃいよ。せっかく船に乗ったんだから」  段差が多いのと通路が狭いため車椅子を畳んで歩いて乗船したみどりだったが、さすがに少々疲れたらしい。笑顔で(かぶり)を振った。 「え、マジで?」 「当然でしょ。私はここから外の様子を見ているだけで十分よ。行ってらっしゃい」  みどりに促されて、寺崎は玲璃と顔を見合わせた。 「……じゃ、行ってみるか」 「いいんですか? みどりさん、お一人で」 「いいわよ。あんまり気を遣わないで。私の方が困ってしまうわ」  すると、無言で後ろにたたずんでいた紺野が口を開いた。 「いいですよ、お二人で行ってきてください。僕がみどりさんと一緒にいます」 「何を言ってるの。私は子どもじゃないのよ。せっかく来たんだから、三人で行ってらっしゃい」  そう言うとみどりは、笑顔を収めて紺野をじっと見つめた。 「……私がいない方が話しやすいことも、あるでしょ」  その言葉に、紺野ははっとしたようにみどりを見つめ返した。  玲璃はみどりの言葉の意味がつかめなかったらしく、不思議そうに首をかしげたが、寺崎は何か思い当たることがあったのか、硬い表情で紺野に向き直った。 「確かにそうだな、行こうぜ紺野」  強引に紺野の二の腕をわしづかみにし、問答無用で歩き始める。紺野は戸惑ったように寺崎を見上げたが、そのまま抗えようもなく引きずられるようにして甲板に連れて行かれる。まだよく事態が飲み込めていない玲璃は、みどりに小さく頭を下げると慌てて二人のあとを追った。    ☆☆☆
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