第1話【親友】

1/13
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/719ページ

第1話【親友】

ーー秋も深まり冬の気配を感じさせる少し乾いた風は、クリーム色の大きなカーテンたちを揺らして教室へ舞い込んでくる。辺りにはテンポよくコンコンコンとチョークが黒板を叩く音が響いていた。  そんな中、私はたぶん誰よりも緊張感を持ちながらここにいる。なぜなら、先生が指名する回答順序的に次が私だから。もう俯いて祈ることしかできない。 (うぅどうしよう。やだな……早く終わりますように、早く終わりますようにぃ……)  緊張のせいでチョークの音が時限爆弾のタイマーみたく聞こえてくる。しかし気づけば音は止まっていた。先生を見ると説明を始めている。  ということは、もうそろそろ予定調和的に犠牲者、もとい回答者の選別が行われるはず……。私はまた項垂れた。 (あぁぁどうしよう当てられるよ……。お願い早く終わって)  ドキドキと鼓動が早まるのを感じるばかり。 「はい、じゃあこの問題を前で解いてみようか。ええっと次は……」  ふと顔を上げれば、先生は手元の名簿を指でなぞり次の回答者を探している。 (あぁ……神さま)  その時だった。 ーーキーンコーン……  とチャイムが鳴り始める。  私にとってはただのチャイムではない。もはや教会の鐘のように清らかで、さながら迷えるものを導くような救いの鐘だった。 (も、もしかして助かったのかな……?)  堰を切ったように周囲の生徒は教科書を閉じたり筆記具をしまったりと、号令前に終わりムードを出している。  先生は生贄を諦めたようで 「……あらら時間か。はいじゃあ今日はここまで。次回はサブテキスト使うから全員忘れずに持ってくるように」  そして当番が号令をかけると、まるで気の抜けたコーラのような『ありがとうございました』が教室を包み込む。  みんなはリードを外された犬のように、思い思いどこかへと足を運んでいた。  私はそんな中でほっと一人、胸を撫で下ろし (はぁ良かったぁ……当たらなかった。これは今日の私はついてるかも。ん……?)  と横に目を向ければ、いつの間にやら別のクラスの(あおい)ちゃんの姿。
/719ページ

最初のコメントを投稿しよう!