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 “好き”にも温度があって、二人が同じ温度になることは無い。  私たちの温度波は、今までずっとすれ違い続けてきた。  でも、だとしたら。  その波はいつかどこかで交わる一瞬があって。 「香子」  少し前を歩く彼は、名前を呼んで私の左手を取る。  彼の大きな手に引かれて、軽くなった私は小さく跳ねた。 「孝介」  名前を呼ぶ。彼は笑う。  きっと私も笑っている。  私たちの波はいつもすれ違ってばかりだけど。  ――その波が交わる一瞬は、最高に幸せだ。 (了)
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