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孝介からの返信が途切れても、私は何度かメッセージを送っていた。
忘れられたくない。その一心で。
そのメッセージに彼の言葉が返ってくる日も、返ってこない日もあった。
そして、ついに私は思い切って連絡をするのを止めた。
返信を待つ時間の辛さに、勝手な期待をして勝手に傷つく痛みに耐えられなくなったのだ。
連絡を止めた当初は「これからどうなるのだろう」という漠然とした不安に襲われた。
彼との連絡は頻度の差こそあれ、付き合ってからほとんど毎日行なっていたからだ。
孝介のことを考えない日常が想像できなかった。
しかし、そんな不安は取るに足らないものであったことにすぐに気付く。
いざ連絡を取るのをやめてみると、それが自然に日常となったのだ。
孝介と繋がらない日々に慣れていき、彼以外のことを考える時間も増えた。
囚われてたな、と私は反省した。
そして不思議なことに、私が連絡をするのをやめると今度は彼のほうから連絡が来るようになった。
『元気?』
何の中身もない、ただ連絡したくてしたような文面だ。
ふふふ、と心中でほくそ笑む。
私の苦しみを思い知れ! とまでは思ってはいないが、すぐに返信するのは止めるようになった。
その頃の私は海外ドラマにはまっており、ドラマを見ている最中は何にも邪魔されたくなかったのだ。返信はドラマが終わってから、と決めていた。
しかし稀に返信を忘れたまま寝落ちてしまうこともあって、その時は「ごめん、寝てた。昨日の私は元気だよ」と返した。
すると、すぐに『今日は?』と返ってくる。
私は海外ドラマの再生ボタンを押した。
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