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「どうしたの、ぼーっとして」 「ううん、ちょっと昔を思い出してただけ」  27歳になって、私たちは結婚した。  仕事にも慣れてきて、後輩社員も多く入ってきたおかげで昔よりは残業も大幅に減った。平日の疲れが和らいだおかげで休日も楽しめるようになった。 「おばあちゃんみたいなセリフだね」 「うるさいなあ」  彼は歯を見せて笑って、私の頭を撫でた。  それだけで簡単に私の機嫌が直ると思っているようだ。合ってるけど。 「ねえ、散歩行こうよ」 「急になんで」 「天気がいいからじゃだめ?」  窓から外を見ると、絵の具を贅沢に乗せたような真っ青な空が広がっていた。  とても気持ちの良さそうな快晴だ。 「いいよ」  私たちは同じ色のスニーカーを履いて外に出た。  玄関の扉を開けると、暖かい光が私たちをやわらかく包み込んでくれる。撫でるように優しい風が彼の前髪を揺らして、彼はそれを元の位置に直した。  そんな彼を私は見つめる。
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