Intense*

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Intense*

 通りで捕まえたタクシーに揺られ彼に連れられて来たのは、ホテル街中に佇むラブホテル。しかしそれらしさを感じさせず、シティホテルかと見間違えるほど小洒落た外見だ。  来る道すがら、俺らタメだし敬語はナシねと言われたので、素直に頷いた。  手を引かれるまま、柊が慣れた様子で受け付けを済ませるのを黙って待ち、時折短く言葉を交わしながら到着した609号室。  内装は、シンプルだがどこか高級感が漂う広めの上品なつくり。部屋の中央にはクイーンサイズのベッド一つ、入ってすぐの右角にはローテーブルとそのセットの二脚のイージーチェア。そしてその脇に備え付けの小さな冷蔵庫がある。右奥にはシャワールームがついており、扉側の左奥にはテレビやソファまである。  しかしやはりラブホテル。“そういう”グッズも豊富に取り揃えてあるようだ。  俺がそんなラブホにしておくには勿体ないような豪華な内装やアメニティに関心していると、突然彼に強く手を引かれベッドに押し倒される。  その端正なお顔立ちの一端を担うシャープな頬をするりと撫でて、首に手を回す。 「なに、そんなに溜まってるの?」  吐息まじりに尋ねてみると、ふはっと笑い、彼は目を細めた。 「...そーだね。今日はあんま余裕ないかも。きみのせいだよ?きみより綺麗でかわいー子、俺今まで抱いたことないもん」  俺は無言で微笑んで、彼の頭を引き寄せる。自然と重なった口唇。口付けは深く甘く、理性と共に沈んでいく。  部屋に響くのは二人分の吐息と、粘着質な水音だけ。ちゅっとリップ音を残して、唇は一旦離れていく。  そこで思わず ん、だか あ、だか名残惜しそうに声を漏らしてしまえば、余裕なさげにもう一度重なってきたそれ。  やはりこの男、キスが巧い。流石ドンファンなだけある。巧みな舌遣いは、それだけで淫意を催させる。だがこちらも負けじと舌を動かせば、それに比例して口付けはより激しくなっていく。  お互いに服を脱がせあい、上半身には既に何の衣も纏っていない。  柊が俺の首から胸にかけてキスを落としていく。ちゅ、ちゅ、と可愛らしい音が鼓膜に響いて、柄にもなく少し恥ずかしくなってしまった。  何しろ、こんなふうに一方的じゃない優しい抱き方をする男は、公私共に稀だからだ。  俺が“仕事”で男を相手するときは、乱暴でこちらのことなどまるで気にしないようなやり方をする奴も珍しくない。しかもそちらに関しては年齢層やルックスは問わないのだからまた問題だ。  更に言うと、俺はプライベートでまで好き好んで汚いおっさんらとヤるほど飢えてはいない(それでなくても本当は嫌だが)。だから溜まれば時には仲間内でもヤったりするのだが、お互いの都合や具合を鑑みてみれば、結果的にそれは極めて稀なことになる。  そこで、バーやらホテル街やらで引っかけた相手と一夜を共にするなんてことも割と多いのだが、そこそこのルックスの奴を選んだところで肝心のセックスの方は期待はずれだったなんてこともそれなりの確率であるのである。  つまり一言で言えば、この男は稀にみる大当たりってわけだ。  今まで俺の腹を撫でていた男がふいに顔をあげた。 「ん、...あ、そーだ。ね、名前言ってなかったよね。俺は柊慶介。慶介でいいよ。きみは?」 「俺は柏木律斗。呼び方はどうとでも。てか、言われなくても慶介のことは知ってたけどね」  随分今さらだなとも思ったが、それは口には出さずにおいた。 「あー、そっか。...まあ俺もりっつんのこと知ってたけど」 「え、なんで?」  俺が呆気にとられたような顔をすると、彼はまた笑って俺への愛撫を再開した。 「なんでって、りっつんだってちょー有名だよ?淫乱の、ヤリマンだってさ」 「あはは、言うね...っん、」  まあしかし、それは自分でも認識していることだ。構内の男は既にもう喰い尽くしたと言っていいくらいには遊びに遊んできた。  だが流石にこの人のように自分からオープンにしているわけではないが。でもそれでも噂や事実は広がるものだ。...ときに尾ひれをつけられ脚色され。それは人間の性でもある。 「ん、んんっ...あ、も、ちゃんと、」  彼が焦らすように俺の乳首の周りを舌先でくるくると舐めてくる。中心に触れてほしいのに、なかなかそこを弄ってはくれない。 「ちゃんと?なにが?」  わかっている癖に。悪戯な笑みを浮かべて、執拗に周りばかりを舐める彼。片方は手で、同じように焦らされている。  俺が口に出すのを嫌がり、彼が惚けて半端な愛撫を続けるというやり取りが暫く続いた。  俺は本当に堪らなくなって、半ば泣きながら彼を見上げて懇願する。 「おねが、ぁんっ、も、さわってぇっ...」 「んー?どこを、どんなふうに?」  まだ許してくれる気はないらしい。長い戦いになりそうだ...
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