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Conference
正に東京らしい、ビルが立ち並ぶ車の行き交う大通り。その内に一つ、一際瀟洒で洗練された外観・内装の現代的なビルがある。ここが、俺たちの仕事の舞台で、本家と呼んでいる場所である。
車から降り、それを見上げた。
__今日も、始まる。
俺たちは、俺たちチームの全員の家(各々が好きに帰れる仕事場兼家のような空間)、つまりここを本家と呼び、会議や応接、寛ぎの場としている。28階まであり、見た目は普通のビルだが、内装は少し変わっている。
1階エントランスは、受け付けと1人用の四角いエントランスチェアが十数個あり、観葉植物やフロア説明の案内板などがある。警備員が駐在、更にホテルのようにドアマンまでいる。
2階は応接フロア。客を待機させる小さい応接部屋がこの階のみで30ほどあるが、一つ一つの部屋は内装が違い、その一つ一つに拘っているため、何度も商談や“相談事”に来る客も飽きさせない。
3階~25階。ここが他より変わっているところ。それは、子供の来る場所であるということ。といっても、その子達は普通の子供ではない。それについては後述しよう。
26階は会議室と武器倉庫。武器といっても、仕事用と俺の趣味の銃やライフルなどが多い。
27、28階には、俺たちチームの要員のそれぞれの個室がある。といっても、一つ一つ部屋らしく完全に分かれているのではなく、ある一面は廊下に面しており、そこだけはガラスとブラインドで仕切られているのみという構造だ。また、大部屋も一つあり、そこで俺たちは交流したり、非常に時々にはセックスをしたりもする。
但し、総本家は土地的に二つに分かれていて、もう一方が本当の拠点でそちらは本元と呼んでいる。
本元は本家のようなビルの造りではなく、2階建ての和風建築。ここについてはまあ、後々。
一条と二人で暖房の効いた建物内に入るとすぐに、待ってましたとばかりに近づいてくるオレンジヘアーの男。
「あ、律斗ぉ~!久し振り~!」
久しく見たその笑顔とだらけ具合に、少し気が抜けて俺も自然にふにゃりと笑ってしまう。
「旺祐!久し振り~」
すると彼も一層良い笑顔になり、俺を抱き締めてくる。それで香ったよく見知った匂いに、ここ最近感じていた若干の陰鬱とした気分が緩んで、何でかこの男のことがとても愛しいもののような気がした。
そんな気持ちが溢れ、思わずその胸に擦り寄る。
そうすると、彼も俺の髪に頬を寄せてちゅっとキスをして、それから少し屈むと、撫でてと言わんばかりに頭を突き出してくるので、染めているくせにサラサラな髪をわしゃわしゃと撫でてやる。柔らかくて気持ちいい。旺祐のは髪質がいいのか、ブリーチしてもあまり荒れないらしい。
まるで恋人同士がするような再会に、なんだか妙な心持ちになって、暫く撫でてから手を離した。するとその手を絡め取られて、恋人繋ぎできゅっと握られる。そして彼は暫時それを眺めて、突然笑い出した。
「なんかこーゆーの、恋人同士みたい!」
その言葉に驚いて、俺も同じこと考えてた!と言うと、彼はぱあっと顔を輝かせて、繋いだ手をゆらゆら振った。
こんなことでこんなにはしゃいで、可愛いやつだなあ。
もう寧ろ父性すら目覚めそうな心地さえして、やっぱりこいつといると楽しいなとしみじみ思った。
そうして暫く二人でにこにこしていると、後ろに気配が。
「そこのお二人、楽しまれるのは多いに結構ですが、予定が詰まっているのをお忘れでは?」
この言及は高杉右京から。自身の腕時計をトントンと叩きながら凄みを効かせて仁王立ちしている。隣では一条も呆れ顔でため息を吐いていた。
「あ、そうだった!」
「えっ!もう8時40分!?やばい、もう着替えないと遅れるじゃん!会議9時からだよね?もー、なんでもっと早く言ってくれないかなぁ~」
旺祐がそう理不尽にごちり、皆で小走りになりながらエレベーターへ向かう。
「いえ、およそ責任の所在は貴方にあるのではと存じますが」
右京が多少苛ついた様子でそう言っても、旺祐はなんのそのでエレベーターのボタンを連打していた。
チンと音を立ててエレベーターが着いた。それに乗り込んで会議の確認をしつつ、27階に到着。
0001とある扉を開くと、そこが例の大部屋だ。ここだけは外からは見えないようになっており、二重鍵もついている。広さは90平米ほど。
そして部屋はいくつかに分かれており、一部屋目に入ると、左奥に鍵はないが外からは入れない部屋が上位メンバーの人数分と予備でもう一つあり、そこはそれぞれのベッドルームになっている。
内装はシンプルだが、ベッドのみならず各々好きなようにソファやテレビなどを置いており、なんならここで十分生活していけるような部屋だ。それぞれの趣味の空間ともいえる。個性的にアレンジされたホテルをイメージしてもらえれば一番合っているかもしれない。
こういった大きい会議の時は、打ち合わせなども兼ねてここに集まって皆で着替える。
案の定、それぞれの着替えは既に用意されていた。一条だろう。
各々服を着替えると、鏡で身だしなみを整え、腕時計を着ける(次ページにそれぞれのメンバーのスーツ・腕時計のブランド、品物を載せておきます→自己満)。
準備が整い、再びエレベーターで一階下のこのフロアで最も大きい会議室、通称コンファレンスルームへ向かう。
腕時計はちょうど8時59分を指していた。秒針が9時0分の文字盤に載ると同時に、俺はその扉を開けた。
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