オンステージ

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「素晴らしい!!我が命は聖なる泉の清らかなる恵みで回復するのだ!最終戦争ラグナロクに備え、英気を養わなくてはならない。ふふふ・・・ははは!!!」 「あや!!声が大きいぞ!!風呂場は声が響くから静かにしろよ!!」 リビングから兄の怒った声が響く。しかし、あやちゃんは反省しない。お風呂を満喫している今の彼女には、自分の世界しか見えていない。日頃から中二病を発症しており痛い発言の多い彼女だが、特に風呂場では、アイドルがステージに上がって踊っている時のようにテンションが上がっているのである。 「もうすぐフィンブルの冬が訪れる。だが、我は決して凍えることはない。内なるエネルギーは止めどなく生み出され、我がエーテルも無限なのだ!!この内なる火照りは何だろうか・・・ラグナロクが近付いている予兆であろうか・・・」 「あや!!声が大きいと言っているだろ?」 風呂場の扉に薄らと兄の姿が写っている。どうやらリビングから脱衣所まで来たようだ。それでもあやちゃんは動じることはない。最初の頃は、兄に脱衣所に置いてある自分の下着を見られることに抵抗があった。しかし、回数を重ねる度に全く気にならなくなった。 「兄よ、我が優美なる肉体を見たいのか?だが、その行為は、巨人と神々、そして人間で締結された神聖不可侵の領域を犯す行為だ・・・その覚悟はあるのか?」 「妹に欲情なんてしないから、静かにしろ!近所迷惑だから。」 「ふふふ・・・ははは・・・最終戦争!ラグナロクの決戦は近いぞ!!」 兄は深いため息をついて脱衣所を出て行った。 風呂場のあやちゃんのオンステージは1時間にも及ぶ。元気が取り柄のあやちゃんは風呂場で騒いでいてもエネルギーは無尽蔵で自分の世界が完成するその瞬間まであやちゃんは騒ぎ続ける。
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