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「あ、そこ石畳なんすけど滑りやすいトラップ床すね」
「うん、滑りやすい床だった。案内役は何をしている」
「まさか刀持ってる強キャラがこんなトラップにひっかかるわけないと思ってますー」
「……そうだな。しかしべとべとの液体がまとわりついているんだが」
「お肌に塗ると保湿効果抜群の化粧水を贅沢にトラップに使ってるんで。明日のおにーさんの肌はもちもち赤ちゃん肌っす」
「花の香りがするのがなんとも屈辱的だ」
また転ばぬように蘇芳は慎重に起き上がろうとする。その低くなった視界で、蘇芳は化粧水でできた足跡を見た。
ブーツを履いた大きめの足跡が、蘇芳の前にうっすらと残っている。
「……この足跡は、誰のだ?」
「足跡? あ、ほんとだ」
「サイズ的には俺より大きい。撫子はこれに引っかからなかったはずだし。このダンジョンはほぼサキュバスしかいないようなものだ。女性の足跡とも思えない」
ならばこの足跡は誰のものか。そしてまだ化粧水は乾いていない。そのことから蘇芳は答えを導き出した。
「このダンジョンには侵入者がいる!」
「……え?」
「おそらくは、相手を眠らせる事のできる侵入者だ。君たちサキュバスはそれに眠らされ、そのうちに通過したんだ」
思えばサキュバスが夜型とはいえ全員寝ていたのはそのためだ。足跡の大きさから侵入者は男と考えれば、一番の脅威は異性を魅了できるサキュバスだ。
だから眠りの術を使って眠らせた。そして塔の四階まで進む事ができた。
「そいつらは俺達の前に進んでいたんだ。そして俺と同じようこのトラップに引っかかった、だとしたら、撫子が危ない!」
侵入者が現在どこにいるかはわからない。しかし撫子はすばしっこいため、すぐに侵入者に追いついてしまう。
蘇芳はべとべとの羽織と草履を脱ぎ捨て走り出した。
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