アルバトロスの塔

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どこか冷めた口調で蘇芳が言った。 新種の生物を創るのは容易な事ではないということだろう。魔力を使えば強い生物となるかもしれない。しかし生物は環境に適応させなくてはならない。だから魔王はよく考えてて創造する。新しい魔物を創るまで出られない。なのでカンヅメと彼らは呼んでいる。 改めて塔の立地について、撫子は考えてみる。近くの町まで、人間の足で三時間程歩けばたどり着く。ならば人間達も攻略部隊を編成し、攻略を考えるだろう。過去、実際にこの塔は何度か奪われたらしい。 だから戦力増強を考える。魔王とは玉座でふんぞり返るものと想像していた撫子には、少し意外だった。しかしよくよく考えて見れば、昔蘇芳は城で侵入者を迎撃していた。日々龍脈のある拠点の奪い合いをしているのに将がぼんやりしていられるはずがないのだろう。 「そういえば、魔王陛下とはどのようなお方なのですか? 私はまだお会いした事がありません」 「……まぁ、会ってみればわかるさ」 ふと撫子は質問する。蘇芳は曖昧に答えた。 魔王の部下が蘇芳で、蘇芳の部下が撫子だ。部下の部下では魔王との謁見ができるはずがない。なので人物像ならぬ魔物像を、蘇芳の口から聞いてみたかった。しかしその蘇芳はなぜか遠い目をしている。 そういえば、蘇芳は妙に魔王に対して気安い。こうして魔王本人がいない時に、あまりかしこまった言葉を使わない。しかし負の感情を抱いているというわけでもない。蘇芳が魔王を語る時、どこか力が抜けているのだ。古い友人を語るときのようだと撫子は思う。 「さて、事前の情報交換はここまでが限度だろう。視察に入ろう。しかし案内人、いや、案内魔物がいるそうなので攻略というよりは視察か」 「そうですね。案内がいるのなら、罠の位置がわかるかと」 蘇芳達は制圧目的で来たわけではない。あくまで魔王に物資を届けに来ただけだ。中に入れば案内人がいるはず。 しかしその案内魔物でも罠の位置すべてを把握していないし、魔物は魔物同士で必ずしも友好的というわけではない。話の通じない魔物が人型の魔物を見てすぐ襲う、なんて事もある。それにもし人間の侵入者が現れたらここの魔物とともに戦う必要もあった。 「撫子、女子に荷物を持たせて申し訳ないが、この風呂敷を持っていてくれるか?」 「ええ、それはもちろん構いませんが……」 「できればあまり揺らさないでほしい。だからなるべく安全な道を慎重に歩むように」 それは蘇芳なりの気遣いかもしれない。この荷物はきっと魔王へ渡すものだ。しかし重要なものをあえて撫子に渡す事で、彼女は無茶ができなくなる。初のダンジョン攻略に気合が入りすぎず、きちんと役目を与えたいのだろう。 しかし、この風呂敷の中身はなんなのだろう。
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