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小夏の心
春野琴花というのが藤川小夏の好きな人だ。
ゆるやかに瞼の向こうが明るくなったような気がして、藤川小夏は仰向けのまま薄目を開けた。
頭はまだぼうっとしている。身体はまだふかふかのベッドで寝ていたいとシーツに吸い付いている。
あぁ、幸せで辛い朝。そう思ってシーツに頬ずりをした。
ふと、小夏はこれがいつもの朝とは違うということに気がついた。
天井が自分の家のものと違うのだ。
色はどちらの天井も白ではあるが、謎のシミの位置が少し違うような気がする。
それから根本的な違いが一つ。
小夏は普段、床に敷いた布団で寝起きしていて、ベッドなんてオシャレなものは自宅にはないのだ。
小夏は大きく目を見開き、急いで左向きに身体を倒した。
そこには規則正しい寝息を立てる春野琴花がいた。
小夏と同じ掛け布団に包まって、右側の方に顔を向けている。
つまり、今の小夏は琴花の寝顔をじっと見てしまっている。
とくん、と一つ心の中で音が響いた。
それはにわかに早くなって、とくんとくん、と何度も小夏の胸を鳴らした。
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