10人が本棚に入れています
本棚に追加
実際の琴花は美人というより、どちらかと言えば可愛い系だと小夏は思っている。でも、こうして寝顔を見つめると、琴花の顔は普段よりもいくらか大人っぽいように思える。どうやら、普段の言動や表情が琴花を幼く見せているようだ。
小夏の思いなど何も知らない琴花の寝顔を、堂々と長々と見つめていると、何やらいけないことをしているような気がしてくる。起きていたらここまで詳細にまじまじと見ることはできない。
小夏は僅かに罪の意識に駆られて、琴花の方を向いたまま、暫し目を瞑った。ベッドの暖かさや、カーテン越しの朝の光が、目を瞑ることで身近に思えた。小夏は今一度眠りの中に落ちていきそうになっていた。
「こなつ……?」
舌足らずな声が、小夏を呼んだ。
びくりと肩を震わせ、小夏はゆっくりと目を開けた。
「琴花、起きた……?」
先ほどまで琴花をじっと見ていたことを当の本人である琴花は知らない。胸の音をどきどきと鳴らしながら、小夏は「おはよ」と掠れた声で挨拶をした。
琴花は眠そうな表情のままじっと小夏を見つめ、それから約三秒後、欠伸をしながら「おはよう」と挨拶を返した。
「……小夏? なんでいるの?」
最初のコメントを投稿しよう!