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ねえ、もう締め切りまであと1時間しかないから、推敲なしでどんどん書いていくよ。
誤字脱字は許してね。とにかく、投稿することに意義があるって思っているから!
まず、聞いてよ。
私ね、この一ヶ月間、ずーっとコンテストに応募するための原稿を書いていたの。
毎日、会社でコソコソコソコソ──それこそ、自分の仕事をほっぽりだしてね。
まぁ、いいオトナがすることじゃないよね、いくら賞金がほしいからって。
若者ならいざ知らず、人生経験そこそこ豊富な人間がやることじゃない。
なのにさぁ、なのにですよ。
締め切りまであと1時間ってところで、気づいちゃったわけですよ。
一ヶ月かけて書いた、この作品……
つまんねーーー!
どうすんだ、ってレベルでつまんねーーーーー!
もうさぁ、どうすんの、これ。
本業と引き替えの一ヶ月間がすべて無駄になるってこと?
いやいや、ふざけんなよ。冗談じゃない。
こうなったらアレだ……もう最後の手段ですわ。
「目覚めよ、妄想力!」
そう、妄想……
原稿のつまらない部分をすべて妄想力で補うしかない!
まずは、最初のシーンで隕石が降って来て……
そこから謎の人物との交信がはじまって……
それから……それから……
それから……
……ふぅ、なんとか間に合った。
時計を見ると、コンテスト締め切りまで「あと5分」。
やばい、めっちゃギリギリじゃないですか!
まあ、でもすべては「妄想力」のおかげですわ。
ありがとう、妄想力。助かったよ、妄想力。
それじゃ、コンテストに応募してきますね。
ポチッ……
──「ノンフィクション大賞・応募完了しました」
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