ねむりにつく前に

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 高志はバリバリ働いた。働いてはたらいて、事業を大きくすることがすべてといっていいほどに働くのだった。  なぜ働くのか?それはもちろん、妻や子にいい暮らしをさせるため。初めはそう考えていた。  昔、家庭を顧みない仕事人間を主人公とするドラマを見たことがある。その当時、後の妻になる咲希子と見ていて、実際にはありえない、そんなことが起こりうるはずがないとバカにして見ていた。その男は妻も子も愛してると言い、だから仕事をがんばっているのだと言った。矛盾だ。愛してるのなら早く家に帰るのが本当だろう。 高志自身はどうかというと、決して裕福ではないが愛する咲希子とよりたくさんの時間を持つため飲食業を始めた。それなりにお客はついてくれてるが、家賃光熱費、アルバイトを雇っているのでその給与。もろもろ合わせると結構な額となり、貯蓄もままならない状態だった。けれども咲希子と共に暮らしていけるならばしあわせだった。しあわせ、確かにしあわせだけれど……、100パーセントじゃない。それは将来のことを考え出すと……。
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