ねむりにつく前に

3/10
前へ
/10ページ
次へ
 飲食業というのは不思議だ。劇的にうまいものを看板メニューにおいておけば繁盛するというものではない。もちろんあるに越したことはないが、それには良い目利き、高級高額な材料、良くしてくれる仕入先が必要となってくる。そうなると自動的に販売価格が上がってしまう。それにいつも置いておけるようにするために、ロスも考えなくてはならない。そして何よりそのうまいものは何度もなんども食べたいものか?という疑問にたどり着く。ひとに紹介したい、接待で使いたい。記念日に食べに行きたい。そういうお客さんがこぞって来店してくれるならば単価を高く設定すればいい。けれど、バランスを取るため、店の内装はこだわらなくてはいけない。そしてお客様にもかなり堅苦しい制約を強いることとる。そこまですると、お客様を選択しなくてはならなくなる。高額な支払いをしてもらうには下品なお客、騒がしい子供などを排除しなければ、気持ち良く食事ができたと、うまいものを最高の空間で堪能できたと思ってもらえなければ次につながらない。矛盾が出てきた。それでは一見さんは記念日に使えない。予約の時点で断ることが増える。もし、そうしたくなければ、たくさんの個室を用意するといいのかもしれない。けれど、そんな高額支払いの店にどれだけの余裕を持たせればいいのか。また内装にも経費がかかる。どこに出店するのか。遠すぎると来てもらえない。都会だと家賃だけで膨大だ。駐車場も用意して、となるとどこにそんな土地があるのか。考えればキリがない。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加