ねむりにつく前に

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 会社も大きくなってきた。恩返しも考えなくてはならない。  食から始まった会社だ。食の安全を手掛けることにしよう。各地で作物の病気や害虫に強い品種の開発をしてるところに援助し開発を急いでもらい、一品種二品種だけというのではバランスが悪い。たくさんの食物を効率よく開発してもらうよう差配した。  不動産業の跡取りは海外の水に興味があると言った。清潔な水が足りていないそうだ。不動産のノウハウを授けてもらったのだ。すぐに現地へ飛んでもらった。現地ではかなりのいざこざがあり、それらに手を焼き、報告もろくに来ないというのが三年続いた。が、資金を滞らせることなく入れていた。すると思いやりと熱意の塊が実を結び、いざこざを抑え込み、井戸を掘り、更に開発が二段階三段階進んだ作物を作付けし、収穫するまでに至った。    彼は英雄扱いされ勲章をもらい、そして我が社の名前も広く知られるようになった。  それならばと、まだまだ水に困っている地域にたくさんの人材を向かわせた。すると、海が側にあるいくつかの地域の調査員から、井戸を掘るよりももっと手早く安全な水を得られる海水から真水を取り出せる装置を送ってくれと報告があがってきた。それも無償で送ることにした。だが、それで終わりにしたくない。装置のメンテナンスができるメカニックを育てなくてはいけない。  科学が万能ではないところもある。教育が行き届かないところもある。メンテナンスができる人材がひとりふたりでは困る。更に効率の良い自然に負担の無い装置に切り替えてもらわなくてはならない。その地域で使うのに適したものができるのが一番だ。そのために、現地に学校を設立した。更にその上の高等教育、専門教育、もっというとそこに働く教師を育てることにも力を注いだ。
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