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1.ゆるやかな絶望しかない未来
『おー、助かる。じゃ19時に改札で』
ご飯を作りに行こうかと尋ねたら、了解の旨の返事が届いた。
今日の今日でOKということは、今は仕事の忙しくない時期らしい。
わたしには幼なじみがいる。
幼なじみの家に、たまにご飯を作りに行く。
頻度は月に一回と決めている。それは厳密ではなく、なんとなくを装う一ヶ月。それ以上頻繁には行かない。それはわたしの矜持と予防線。
「おー、待った?」
黎は待ち合わせの時間少し前に改札から出てきた。
仕事の疲れからなのか、着ている服のせいなのか、ひどくくたびれて見える。もともとの線の細い体格のせいかもしれない。鍛えているらしいが、全く武闘派には見えず、さらに痩せたように思えた。
「おかえりー。ちょうど今、買い物おわったとこ」
「まじか、わりいな」
「いいよ。早く着いて時間あったから」
「ん、持つ」
「あ、ありがと」
「ちょ、おま。これ買いすぎだろ。いくらだった」
「いいよ、別に」
「そうはいくかよ。あとで払うわ」
思わせぶりなこともしない、言わない。
ホントに黎はまじめだ。
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