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身体は冷えるし、濡れているしで、泊まるのならもうお風呂に入ってしまおうということになって、わたしが先に入っている間に黎は雨の中コンビニまで行って化粧品のお泊りセットを買ってきてくれていた。
替えのショーツまで。
わたしがその買い物内容に言葉を失っていると、
「し、仕事でそういうのを買いに行かされるときもあるから、女の人がいるモンとかわかるんだよ!」
「いや、まあ助かるけれども……」
有料で購入したらしいコンビニ袋にはご丁寧にそれだけが入っていた。
もちろん避妊具の存在はない。
「上は……さすがにコンビニでは売ってなかった」
「いいよ。いつも家ではしてないから」
「おま、そんな話すんなって」
「あー。コンビニ行くならお酒頼めばよかった」
「おいおい、だから酒はやばいだろ」
「黎は、でしょ?」
二度目のセックスはお酒が入っていたことが大きな原因だった。
「いやそれもあるけど、お前も明日仕事だろ?」
黎はあまりお酒が強くないので、酔わせればいい。
酔わせて誘って襲わせて、逃げられないようにもう既成事実を作ればいい。コンドームも必要ない。
でも、今夜お酒で理性をうばったとしても、もう勢いだけで済ませられない融通のきかない大人になっている。
不必要に確たる理由と責任を求めたがって、結果に後付けしたような理由は軽んじられる。
たぶん、三度目があれば黎はわたしと距離を置くだろう。自らへの罰として。そんな正義感、わたしにはいらないのに。
三十歳を超えたわたし達は、さっきの中学生を笑えない。
お祭りマジックに乗じる軽さはないのに、一線を越えるきっかけを雨濡れに求めるような幼稚さはあって。
彼ら以上に不自然で不器用だ。
でも、やっぱり壊す勇気のないわたしも十分に、何かの固定概念に凝り固まった大人だった。
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