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そういう意味ではわたし達は友達以下なのかもしれなかった。
身体のことを心配して、ご飯を作って食べさせるために押し掛ける母親のような、そんな立ち位置。
わたしは自ら志願しての飯炊き女。
大義名分を掲げて、その実、下心あさましく、すがっていただけ。
「一人でも、ちゃんとご飯食べなさいよ」
「母ちゃんかよ」
「少しは自炊くらいしなさい」
「本格的に母ちゃんだよ」
笑い合ってから、わたし達はしばらく食事に集中した。
「あ、これおいしい」
「うん、うまいな」
「世間体以外に結婚制度の意味ってあるのかないのかわかんないけど」
「そりゃお前、法律に妻や夫の地位とか権利とか、色々守られるのが結婚制度だ」
警察官的回答、とわたしは少し笑った。
「夫とか妻とかじゃなくてもいいから、おいしいものを食べたときにおいしいって言い合ったり、きれいなもの見たときにきれいだねって一緒に感動を分け合ったりできる人がいるのはいいなって思う」
春は桜、夏は花火、秋は紅葉、冬は雪とか、それだけじゃなくて夕焼けとか青空とか蝉とか花とか、連綿と続く日常に、ささやかな感動はいくらでもあるから。
そしてそれらはそのときには取るに足らない風景であっても、思い出す時には決まって幸せな光景としてリプレイされるだろうから。
「そんなとき、黎の隣に分かち合える誰かがいてあげて欲しいと思うよ」
「……母ちゃんかよ」
笑う黎の顔が切ないくらいに歪んでいた。
「そういえば」
「うん」
「いつかだったか、俺ん家から花火見たよな」
夏はもう終わりだ。
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