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2.希望ある未来を望むこともできる
「あそこで結婚してないのって、前田と浅ちゃん、黎くんの三人だけじゃない?」
メインのステーキを頬張ったタイミングで飛び出した発言に、わたしは少し離れた黎のいる円卓を見た。
さっちとタカシの披露宴で、わたしは新婦の中学、高校時代の同級生というテーブルにカテゴライズされ、黎は新郎側のそれのテーブルにいる。
男ばかり八人のテーブルにおいて既婚者は五人。
「男子は独身の方が少ないの?」
「対して、こっちは八分の五が独身って、私らやばくないー?」
同じテーブルを囲む同級生の自虐的な発言に、左手の薬指に指輪の光る三人は肩身の狭そうな笑いで応えている。
「独身だけで合コンしても、私らの誰かが二人あぶれるし」
「あいつら相手に、それってなんか腹立つわー」
「えんちゃんは黎だからいいじゃん」
「え?」
食事に専念していたわたしは慌ててお肉を飲み込む。
「わたしと黎はそんなんじゃないってみんな知ってるじゃん」
「確かに知ってたー」
「黎かっこいいのにねー。ケーシーチョーだし。なんで結婚しないのかなあ?」
「さあ、なんでだろうね」
もう一度、少し離れたテーブルの黎を見る。
久しぶりに会う仲間ととても楽しそうだ。
黎は昔から面倒見がよくて、親しみやすくて、男子からも女子からも人望があって、クラスのムードメーカーだった。
わたしの思い出のなかの黎はいつも、笑顔でみんなの輪の中にいる。
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