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兄が前を向いたあと、研介がそっと手をつないできた。
うわーっ。
課長の手だっ。
初めて触ってしまったっ、と胡麻子は緊張したが。
恥ずかしさから飛んで逃げたい気持ちをぐっと堪え、一度だけ、黒焦げの資料倉庫を振り返ってみた。
「……くしゃみ出なくても。
爆弾でピンチで吊り橋効果にならなくても。
きっと一生……」
課長が好きです、と言う前に、研介が言ってきた。
「きっと一生、お前が好きだ」
胡麻子は、はにかむように俯きながらも、研介の手を握り返し。
ふたり一緒に廊下を歩いていった。
完
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