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別に此処がふたりの思い出の地というわけではない。
たまたま人気がないから選んだだけで、ふたりで此処に入ったのも初めてだった。
単に直前まで、此処でシミュレーションしていたので、もう此処以外の場所では告白してはいけない気分になっていたのだ。
なんとかしなければ。
そうだっ!
「お兄ちゃん、どうしようっ!」
おもむろにスマホを取り出し、叫んだ胡麻子の肩を研介がつかむ。
「上原っ。
何故、俺じゃなくて、他の男を頼るっ」
「おにいちゃん、県警の爆発物処理班にいるからですよっ!
今日、此処で課長に告白しようと思ってたのに!
なんで、よりにもよって、爆弾がっ!」
と胡麻子が、今この瞬間でなければ、爆発してよい、くらいの勢いで叫ぶと、
「なんと、やはり、そうだったのかっ!
お兄さんっ、なんとかしてください!」
と研介もスマホに向かって叫ぶ。
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