1人が本棚に入れています
本棚に追加
就寝の時間になり、幸子と優希は寝室にいた。幸子は敷布団に、優希は幸子のシングルベッドを借りて寝ていた。
「お姉さん、起きてます?」
しんと静まり返った寝室に小さな声がよく響く。
「起きてるよー。あと呼び捨てでいいよ、敬語もいらない。友達なんでしょ?」
「幸子、も、呼び捨てでいい」
優希は照れたようで、後半の言葉は深く被り直した掛け布団によってくぐもったが、なんとか聞こえる。
「優希、どうしたの?」
「今日は有難う」
「いえいえ」
「幸子、私ね……」と優希の声のトーンが低くなり、語りはじめた。
「高校二年の時に末期癌で死んだの。治療ばっかりで友達もろくにできなくて。でも、そんな私を両親が気にかけてくれて、おしゃれはしてたんだ」
「じゃあその髪と目も?」
「うん。でも、おしゃれしても誰も見てくれる人はいないし、どこかに出かけるわけでもないから結局、意味なかったかな」
「おしゃれして、どこに行きたかったとこあるの?」
「遊園地、とか?」
「じゃあ明日、遊園地行こうか」
「え、でも」
「遠慮しない! わたしも久々に行ってみたかったし、行こうよ!」
「うん」
「幸子……」
「ん?」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「幸子は死神、信じてるの?」
「うん、まあね。あぁ、そういえば聞きたいことあったんだけど、わたしの死因って何?」
「死因? 確か"不明"って書いてあったよ。普通は書いてあるんだけど何でだろう」
「不明⁉︎ わたしが聞きたいよ⁉︎ マジで寝れる気がしない!」
「おやすみ幸子」
「え、ちょっと寝ないでよ! ねぇ⁉︎」
寝室には、幸子の悲痛な声が響いていた。
最初のコメントを投稿しよう!