私の死神、ありがとう、さようなら。

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就寝の時間になり、幸子と優希は寝室にいた。幸子は敷布団に、優希は幸子のシングルベッドを借りて寝ていた。 「お姉さん、起きてます?」 しんと静まり返った寝室に小さな声がよく響く。 「起きてるよー。あと呼び捨てでいいよ、敬語もいらない。友達なんでしょ?」 「幸子、も、呼び捨てでいい」 優希は照れたようで、後半の言葉は深く被り直した掛け布団によってくぐもったが、なんとか聞こえる。 「優希、どうしたの?」 「今日は有難う」 「いえいえ」 「幸子、私ね……」と優希の声のトーンが低くなり、語りはじめた。 「高校二年の時に末期癌で死んだの。治療ばっかりで友達もろくにできなくて。でも、そんな私を両親が気にかけてくれて、おしゃれはしてたんだ」 「じゃあその髪と目も?」 「うん。でも、おしゃれしても誰も見てくれる人はいないし、どこかに出かけるわけでもないから結局、意味なかったかな」 「おしゃれして、どこに行きたかったとこあるの?」 「遊園地、とか?」 「じゃあ明日、遊園地行こうか」 「え、でも」 「遠慮しない! わたしも久々に行ってみたかったし、行こうよ!」 「うん」 「幸子……」 「ん?」 「ありがとう」 「どういたしまして」 「幸子は死神、信じてるの?」 「うん、まあね。あぁ、そういえば聞きたいことあったんだけど、わたしの死因って何?」 「死因? 確か"不明"って書いてあったよ。普通は書いてあるんだけど何でだろう」 「不明⁉︎ わたしが聞きたいよ⁉︎ マジで寝れる気がしない!」 「おやすみ幸子」 「え、ちょっと寝ないでよ! ねぇ⁉︎」 寝室には、幸子の悲痛な声が響いていた。
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