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誉の声が上がった。
聖は手にしていたグラスを落としてしまい、それが誉のジーンズに掛ったのだ。
ワインは、そのまま床の高価そうな絨毯へと沁み込む。
「っ! 何か、拭くものは……」
慌てて身を翻そうとした誉だが、聖の微笑みを見てその動作は金縛りにあったように静止した。
――――美しい。とにかく目が離せない程に。
「あ――」
言葉を失う誉に、聖は両手を差し伸べる。
その指は、誉のベルトに掛った。
「悪い、ワインが掛かってしまったな。染みが出来てしまう前に脱いで、これは洗濯機に放り込んでこい」
言われるままに脱ぎ捨てるが、誉の視線は一秒たりとも聖から離れない。
――――離せない。
ガウンの襟元から覗く白い胸は、決して女性的ではない。程好く筋肉も付いていて、むしろ女性に好かれそうな肉付きをしている。
触ったら、どんなだろう?
無意識にそう思い、そう考えた自分にカッと血が上った。
「こ、これは安モンだから、別に染みになってもいい。それより、床の絨毯の方が大変だ。急いで処理しないと――」
「処理しないといけないのは、こっちの方が先じゃないのか?」
クスクスと笑うと、聖はつーっと指を這わせた。
その指先は、天に向かって屹立している誉のボクサーパンツだ。
「なぁ?」
その頂点をピンっと指で弾くと同時に、誉は前屈みになって小さく呻いた。
「うっ……」
思わずその場で両膝を着いた誉を前に、聖は少々驚きの声を上げる。
「おいおい、まさかこの程度でイッちまったのか?」
「……」
誉の顔は、真っ赤になった。
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