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「……その時に、ユウが、いい加減にしろと言い出してな……」 「はぁ!?」 「相手は女だとか男だとか、ユウにとってはそんな事はどうでもいいらしい。とにかく『一番好きな人』が結婚する相手だというのが、あの子の理屈だ」    その時の事を思い出し、聖は重苦しい溜め息をついた。 『だってオレには零がいますから、もう結婚している事になるでしょう?』  ニッコリ笑って言い切るユウに、聖は困惑しながら反論した。 『いや、しかしそういう訳には――それに、日本では同性同士の婚姻は法律上――』 『そんなのは関係無いです。古今東西、一番好きな人が結婚する相手です』 『う……』 『だから聖さんも、四の五の言わずに一番好きな人を選んで、いい加減に結婚して下さい』  澄んだ青水晶のような瞳で見つめられ、聖は二の句が継げずにワインを飲み下すしか出来なかった。  レストランの扉付近には、真壁が番犬のように待機していたが。  その真壁が、頬を赤らめながらドキドキハラハラした様子で、テーブルに着いていた聖とユウの二人をそっと見守っていることに気付き……ますます聖は、居たたまれない気がした。  ユウの言葉は、正論過ぎて眩暈がする。 ――――一番好きな人が、結婚する相手か。 「まさか、自分の子供から、いい加減に身を固めろとせっつかれるとは思わなかった」  がっくりと項垂れて言う聖に、碇は『うぅむ』と唸りながらポツリとこぼす。 「まぁ、とにかく飲めや」 「ああ」  聖には、好きな人は多い。  そして言い寄って来る人間は、もっと多い。  だが、今まで結婚なんて考えもしなかった。  まったく、これは困った事態だ。
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