0-NoDay

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 いつか終わりがやって来る。  それはきっと、残酷なほどに無残な終わり方だろう。  その予感をヒシヒシと感じながらも、聖は日々平静を装っていた。    ◇ 「――では、今回は弊社からのタレント起用は見送るということですか? 」 「残念だがね。今回は外資も絡んでいるので、身贔屓は出来ない。向こうは、ハリウッドでも活躍する、アジア系俳優として評判のリリー・チェンを正式に御使命だ」 「リリー・チェンですか……」  それは、中国出身の有名俳優の名だ。  巨大な中国資本も見込めるだけに、そこに捩じり込むのはさすがに難しいだろう。  もう、万策尽きたも同然だ。  それは、解ってはいるが。 「それじゃあ、オレはタダ乗り(・・・・)されただけか」  半年に及んだ交渉に、聖は苦虫を嚙み潰したような表情になる。  再来年全世界公開予定の映画に、自分の事務所からの役者起用を打診していたのだが。  準主役級を射止める為に、ずいぶんと無茶をしたが……。 「――オーディションも無しか? 」 「ああ。以前のハリウッドでは考えられない事だが……この業界も、昔に比べたら状況は恐ろしい程厳しくなった。近頃は、資金繰りに苦労して頓挫する映画も多い」 「もう博打はしないって事か」  溜め息をつきながら、聖はうつむく。 「……最初から、収益が見込める市場を狙って投資する――それは理解できるが。しかしそれはつまり、ダイヤモンドの原石を探す時代はとっくに終わったって事だな。ハリウッドも、夢の無い世界になったもんだ」 「それが資本主義だ」  相手はそう言うと、カウンターの上にホテルの部屋の鍵をそっと置く。
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