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真壁がヤツと言い捨てる相手を思い描き、聖は複雑な表情になる。
「気のし過ぎじゃないのか? あいつも組の立て直しで相当忙しいハズだ。オレのことなんか構ってられないだろう」
「そんな事はありません!」
真壁はキッパリと断言し、心配そうに聖を見つめる。
「警察沙汰にまでしたくないのであれば、オレに連絡してください。どんなささやかな事でもいいので、気掛かりがことが一つでもあれば何時でもどうぞ。直ぐに駆け付けますから」
本当に言葉の通り、真壁はそれが例え夜中だろうとすっ飛んでくるだろう。
「オレでよろしければ、昔のように、ボディガードとして二十四時間お傍に置いてほしいのですが――」
相も変わらず忠犬っぷりを発揮する真壁に、聖は目を細めた。
「そこまでしなくてもいい。お前にだって自由な時間は必要だ。まだ若いんだし、少しくらい羽目を外して遊んでみたらどうだ?」
「そんなっ」
「ははは、お前は変わらないな――」
そう、本当に変わらない。
真壁は真っすぐだ。
ずっと一途に、聖を慕って支えようとしてくれている。
だが、それ故に……自分の業に真壁を巻き込むような気がして、近くに寄せ付ける事はできないのだ。
「――何かあったら連絡するから、お前は自分の仕事だけに集中しろ」
素っ気なく言うと、真壁は何か言いたげな顔になるが、「分かりました」と返答した。
◇
聖は、都内に三カ所、郊外に一カ所、その他地方に別荘を一棟所有している。
都内二カ所のマンションにはリフォームの工事が入っているので、最近はもっぱら渋谷のマンションを根城にしていた。
寝に帰るだけの場所と割り切っていたのだが、最近、新しい楽しみが増えた。
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