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「君に、お詫びをしたい」
「お詫び? 」
「君の為にプロモーターとして尽力したが、力が及ばなかった」
「……」
「だが少なくとも、私の愛は本物だ。だから君の為に出来るだけ頑張った。映画は無理だったが、現在アメリカで公開されている人気ドラマの来期配役の枠は確保した。どうかそれで許して欲しい」
「……ドラマ、か。どうせネット配信だろう? 」
「今は、ネットの方が稼げるよ。それで構わないだろう? ……しかし、約束を守れなかったのは事実だ。私が紹介した男達と、君も――努力したのに」
(努力、か)
確かに、努力ではあるだろう。
無言になった聖に、相手は気まずそうに身じろいだ。
「だから、君を……今夜は優しく抱いて慰めてあげようと思う。そして私は君に、正式にプロポーズをしたい。私の伴侶になったのなら、さすがにアジア人を蔑視する連中もそうそう無視はできなくなるよ? 」
「このオレに、あんたの専属になれってか? 」
苦く笑いながら、聖はグラスに口を付ける。
氷が解けて水っぽくなった酒を飲み下すと、聖はストールから腰を下ろした。
「See ya!」
そう言い残すと、聖は後ろを振り返る事なく去って行った。
「……So long!じゃなくてよかったよ……」
男はそう呟くと、口を付けていなかったグラスを呷った。
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