1-impact

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 諭すように言う真壁に、相手もしみじみ頷いた。 「そうですね……昔を思えば、ウチの事務所は考えられない程の大出世です」 「だろう? 」  真壁はまるで我がことのように頷くと、手にしていたファイルを差し出した。 「ってことで、来週の三次オーディションの案件だが――間違ってもこいつらは取るなよ」  それに目を通し、相手は少し驚いた様子で言葉を発する。 「え? これって、政治家の息子と大物歌手の娘じゃないですか。内々でデビューの打診があったヤツですよね? 充分マスコミにはインパクトが狙えるし、業界でもジュピターの扱いが上がると思いますが」 「ウチは、二世なんか取らん」  溜め息交じりに、真壁はキッパリと言う。 「――それは社長も同じ意見だろう」 「ですが……」 「なんだ? 」 「二次選考で居合わせた他の役者に向かって、こいつらは『ジュピターに合格は決まっているから、もうお前達は無理だ』……とか散々挑発していたようですよ。それが原因で役者の一人とあわやという雰囲気になり、こちらのスタッフが慌てて途中で仲裁したそうですが」  そのセリフに、真壁は思わず舌打ちをした。 「これだからボンボンは! 気を遣わず、もっと先に落としておくべきだったな。オーディションに来ていた他の役者がそれを真に受けて、他所に移らなければいいが……」    ◇ 「あんた、ジュピターの社長だろう? 」  その言葉に、聖は顔を上げた。  真壁によって自宅マンションまで送ってもらったが、飲み足りない気がしてフラリと行きつけのバーへ足を向けた。  ここ数ヵ月間続いた接待(・・)が祟り、まともな物も食っていない。  このバーのマスターは元料理人だ。
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