落としモノ

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 世間はハロウィンでにぎわっているおかげか、街中で人ではない仮装をしていても誰も気にも留めない。  今夜は久しぶりに昔なじみの飲み会がある。  おまけに今回は世間で人気を騒がした当事者が来ると聞いては、現地に向かう足取りも軽い。  お気に入りの動画配信者のメイク動画を入念に再生し、何度も練習して完璧に自分のものにした。  私はきっちりと本日のために気合を入れて、メイクを施す。  うん。我ながら上手く化けている。  もともと自慢ではないが美肌の私にはメイクなど不必要なのだが、TPOはちゃんとわきまえている。  ほんの少し前までは、マスクを常時使用していたせいで見えない口元が逆に魅力的だと言われたこともあった。  『マスク美人』などと、もてはやされていたのに、令和の時代、マスクは日常品に成り下り、誰もがするようになってしまった。  一時期の品薄状態には心底困り果て、殺意すら抱いたものだ。  それもこれも、新型コロナウイルスのせい。  二十一世紀にもなってもまだ新しいものが生まれるのだから、世の中は不思議で面白い。 「(のう)ちゃん、こっちこっち!」  昔なじみの呼び声に、夜の公園ですでに酔って出来上がっている複数の酒席をかき分けて、目的の場所についた。  どういう経緯でアポを取ったのか謎であったが、彼女の二枚舌ならどうにでもなるのかもしれない。 「いやぁ、こんな素敵な宴会に誘ってもらって光栄です」  噂の当事者はほろ酔い気分で顔を赤くしていた。 「本当にどこで、バズるか、世の中わからないものですねぇ」
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