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-はかねの煙り-5 完結 制作:kaza to kumo club
「美しくないよね。姉さん……。そんなの『はかねの音色』じゃないよ」
病室に転がる姉を……私は許せなかった。
姉は身体を思うように動かせず、コロコロと転がる犬のようにあえいでいた。
実にみじめに……。
「姉さんが悪いんだよ。
あんな男の車になんか乗るから……そんなに醜くなっちゃたのさ!」
姉は回らぬ首をこちらになんとか向けて、なにか言おうとしていた。
目には涙が光り、訴えるようなまなざし!
それが私には……耐えられぬ醜さだった。
「言ったろう、姉さん?
僕を裏切ると……恐いよ……って……!?」
そして
私は姉の生命維持装置のスイッチを引き抜いたのだ。
なぜそんな事を……?
だって……?!
もちろん、
愛していたからだよ。
僕の童貞を遊び半分に奪った美しい姉を……。
だってそうする以外、なかったんだ。
醜い姉さんなんて……いらないから……ねえ。
そうそう、あの死体の女!
どうなったと思う?
実は、
今もいるんだよ。うちの湯舟に……。
私の美しい妻としてね。
あの夜の『はかねの煙り』は
今も私の心に漂っているわけさ。
我が身を魔物と化して、私の中に生きずいている。
ほら、聞こえませんか?
私の心から、あの……
かすかな美しい音色が……?
完
はかねの煙り改定5p
著作:闇魔(やみま)
製作:kaze to kumo club
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