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(熱中症……)
あの炎天下を、日傘も差さず帽子もかぶらずに、その上真っ黒な分厚いスーツを着た状態で歩き続けていたのだ。
無理もないかもしれない。
あ、そうだった。
「スーツは……」
私が一抹の不安を覚えながら言うと、彼はデスクの横のクローゼットを開けた。
「君の一張羅はね……ここ」
そう言って、私に中が見えるように体をずらしてくれる。
確かに、そこには黒いジャケットとタイトスカートが、きちんとハンガーにかけられた状態で収まっていた。
(よかった……)
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