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七宝つなぎの夜
狐につままれるって、こんな気分なのかな。今までの出来事が嘘なのか誠なのか、夢だったのか現実だったのか。
やっぱり酔いがまわって幻覚でも見てた?
何もかにも分からなくて、何も考えられない。
息遣いを取り戻した街をただ目に映すだけしか出来ない無防備な私の耳に、電子音が突き刺さった。
私の意識を引き戻すようにたっぷりと鳴って消えて、そしてまたすぐに鳴り始める。
慌ててバッグの中を探り出し、画面に指を添えて耳に当てた。
『ちょっと!希実!今どこいるの!?』
「どこって……、ど、道路…?」
『は!?道路にいて電波通じないって、電源切ってたの!?なにしてたの!?』
「なにって……、なんだろ…、居酒屋に…いた?」
『なんで疑問系なのよ!?』
「なんでって、………なんでだろ?」
『……とりあえず!そっち今いくから、どこなのか教えてよ!』
焦る友人の声に気圧されながら、一番近いコンビニを伝えて電話を切る。
画面の時刻を見ると、私が走り去った時刻から大体ニ時間は経過してる。その間、音信不通なら確かに焦るか…。
それならニ時間ずっとあそこにいたの?現実と非現実の時間の流れは一緒ってこと?
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