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大学2年生の夏休み、俺は小さな名画座に週3で通っていた。クーラーの効いたホールで昔懐かしい映画を鑑賞する。なんて優雅な夏休みなんだ。
その日も俺はいつも通り、G-10番席に座っていた。開始5分前になって、スマホの電源を切りバッグにしまっていると、隣のG-11番席に誰かが座ってきた。
今日は平日で、他にも席はたくさん空いてるのに、なんでわざわざ俺の隣?と思いながら横目でその人を見た。そして思わず目を疑った。
透き通った肌に、儚げな瞳。色素の薄い髪に、よく通った鼻筋。青いノースリーブのワンピースが良く似合う。彼女は前だけを見つめて、しゃんと座っていた。
絶世の美女だ。俺は直感的にそう思った。
映画が始まってからも俺は彼女のことが気になって、最後まで映画に集中できなかった。
エンドロールが終わって、ついに俺は声をかけた。
「あの」
彼女は首だけでゆっくり振り向いた。
「こ、この後、少しお茶しない?」
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