恵美.18歳.1

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恵美.18歳.1

左手首に一筋の傷がある…傷跡は傍目からでも痛々しい。 18歳の夏の終わり…私が自殺した時の名残り。 私の愛した神崎パパが息子、神崎護に殺された…私の目の前で殺された。 私が唯一甘えられた相手が神崎パパだった。 意識不明の重体だったが二日後に亡くなった…と新聞には簡素な説明文で記載してあった。 父親殺し…当時は非常に珍しい事件…新聞やTVを連日、賑わせた。 私の名前はどこにも書かれなかった。 神崎護は誰にも言わなかった。 私も誰にも言わなかった。 神崎パパは誰にも言えなかった。 私が自殺…未遂だったが、二週間近く入院していた。 学校もマスコミの対応と生徒達への配慮で、十日間の休校。 二ヶ月も経つとマスコミも落ち着き…三ヶ月目には普段と変わらない学校生活になった。 新聞では今度は母親を息子が殺害した…という事件が紙面を飾っていた。 今の若者は何かが狂っている…言いたい放題の評論家がTVでわめいていた。 誰がこんな若者にしたの? 私は悪態をついてTVの電源を切った事を覚えている。
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