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「う、うそだろ、どうなってるんだ!?」
「拝殿が、なくなってる…」
目を見開く二人は顔を見合わせていた。
「……驚いてる場合じゃない。神社の脇にあった田村の家もなくなってる。まずあいつを探さないと…」
「そうだね。でも、石段が続いてるけど、お父さんは田村くんを背負っていくんでしょ。疲れてない?」
自転車を道端に止めながら伊澄は言う。そんな伊澄の言葉に答えないまま、春康は蛍汰をゆっくりと地面に横にさせた。それから何かを考え始めた。蛍汰はまだ目を覚ましていなかった。伊澄は、彼の体から黒い霧のようなものが出ている気がした。
「…ねぇ、お父さん。田村くんが倒れたのと神社がこんなふうになったのって、何か関係あるのかな」
「それはまだわからない。…田村が心配だし、行くしかないだろうな。お父さんはまだ大丈夫だ」
心配そうな表情で春康を見る伊澄だったが、春康はそう言い残してまた蛍汰を背負いなおしてから石段を登り始めた。
「あ、待って!」
どんどん石段を登っていく春康に、慌てて自分と蛍汰のカバンを持った伊澄はあとを追った。
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