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伊澄たち四人は石鳥居の前に下りてきていた。四人が鳥居をくぐった途端に、石段を隠すかのように森林が四人の目の前に現れた。地震はもう収まっていた
「神社が、消えた…?」
「…『呪い』が目覚めてしまったか」
伊澄と春康が呆然と森林を見つめていると、典彦は眉間にしわを寄せながら呟いた。
「『呪い』?それって、この神社の言い伝えにある?」
「あぁ。…詳しい話は、きみの家でしてもいいかい?」
「蛍汰くんのこともあるしな。…わかった。家の行方もわからないだろうから、しばらくうちに泊まるといい」
「助かるよ」
『呪い』と聞いて典彦を見た春康は、典彦の提案に頷いた。そして、四人は内藤家に向かって歩き出した。
「内藤くんは、以前教えたこのあたりに伝わる『黒ぎつね伝説』を覚えているかな?」
夕食後、居間に春康と典彦は向かい合っていた。
「あぁ。確か…、昔このあたりで母ぎつねを殺された子ぎつねの話。風水稲荷神社にある、あの池の前で消えたってやつじゃなかったか?」
「そう。伝説ではそういう話になっているが、実際は違うんだよ」
「えっ!?」
真剣な表情で話す典彦の言葉に、春康はもちろん、居間と隣接している台所で話を聞いていた伊澄と伊澄の母・香奈も驚いて典彦のほうを見た。千花は、動かしていた手を止めてさみしそうにうつむいていた。
「実際は違うって…、どこが違うんだ?」
「……あの池にたどり着いた子ぎつねは消えたのではなく、呪われて池に沈められたんだよ」
典彦が静かに話した言葉に、千花以外の三人は驚いて目を見開いた。
「呪われた…?」
「それに、沈められたって…」
春康は立ち上がっていて、伊澄は話の聞きたさに居間に来ていた。
「まぁ、落ち着いて。うちの神社は、その『呪い』を鎮める…抑えるために、建てられたんだ。しかし、『呪い』はいつの間にか、増幅していたようだ。抑えるために張っていた結界が破られてしまった」
「それじゃあ、これからどうするんだ?また結界を張りなおせばいいのか?」
落ち着いた表情で座るように促す典彦に、春康は戸惑いながらも座りなおし、考え込む。
「そうするしか方法はないだろうな。でも、同じ結界だと、また破られてしまうだろう。…まずは明日、また神社のあった場所へ行ってみるよ」
「そうか。…おれのほうでも、『呪い』や『結界』について詳しく調べてみる。何か手伝えるかもしれない」
「あぁ、よろしく頼むよ」
二人の会話に割り込むすきのなかった伊澄は呆然と座っていることしかできなかった。
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