あと5分だけ寝かせて…

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 僕は朝が苦手だ。毎朝、アラームが鳴るたびにあと5分と思ってしまう。だから、毎朝6時から5分おきに、本来起きているべき6時半からは10分おきに7時まで目覚ましをかけることで遅刻を防いでいる。あと、5分寝たいといつも思ってしまって寝てしまい、いつもギリギリになってしまうが故にそういう設定に至った。    しかし今日の僕は違った。 ピピピッ。6時の目覚ましだ。 うーん、僕はめざましを止める。ちょうどいいところだったのに。でも、どんな夢を見ていたのかは思い出せない。どこかを旅していた気がする?夢の続きが見たかったなぁと思いながらも今日は自然と起きられる。  不思議だなぁ。そんなことがあるものなのか。そんなことを考えながらもフワフワとした感覚で僕は起きて顔を洗っていた。今日はいつもより丁寧に洗える。  そうこうしているうちに再び目覚ましがなる。ちょうど髭を剃ろうとしてきたのに…シェービングクリームで泡泡の顔のまま慌てて目覚ましを止め、続きに取り掛かる。しっかり剃り終えた。完璧だ。さあ、ご飯を食べよう。  ピピピッ。6時10分を告げる3度目のアラーム。止めながら食パンをトースターに入れてセットする。電気ケトルを準備する。  5分後6時15分を告げるアラームが鳴った時にはテーブルには完璧な朝食が並んでいた。ジャムの塗られたトーストにコーヒー。質素だが朝弱い僕には完璧のご飯だ。それに今日はゆっくり食べられる。    トーストを食べ終え、コーヒーを飲み出した頃に6時20分を告げるアラームがなる。今日はゆっくりとコーヒーが飲める。コーヒーを飲みながら経済紙に目を通す。優雅な朝だ。  6時半を告げるアラームが鳴る頃にはコーヒーを飲み終え、興味のある記事にも目を通し終えていた。食器の片付けをし、今日出すべきゴミをまとめる。  ゴミを捨て終えた頃6時40分を告げるアラームが鳴る。順調だ。携帯で今日の予定をチェックする。そして、忘れ物がないかカバンを確認。  6時50分のアラーム。スーツに着替え、髪を整える。完璧だ。7時のアラームとともに家を出る。  通勤途中にスイートバックスでお気に入りのカフェラテを買って職場には8時半に着いた。朝時間があったからかかなり心に余裕がある。9時になると同時に仕事を始める。  仕事も順調にこなしていける。今日は定時までに終わるんではないか?今日は帰りに駅前に新しくできたバーにでも飲みにいってみようか?そんなことを考えながら仕事をしていると携帯がなった。相手は… 上司だ。上司のデスクは確か目の前のはず…いつもそこにいるはずの上司がいない。上司にしては珍しく遅刻か?にしても部下の僕にかけてくるってさ…そんなことを考えているうちに視界が歪む…あれ? 「はい、高木です。」 電話の向こうから上司の声が響く。 「高木くん?寝坊!?今日10時から会議だから資料印刷しといてって言ったよね?」 「あ?はい。朝印刷して置いておきましたけど?」 「いや、君何言ってるの?資料なかったし、君まだ会社に来てないでしょ?あと5分で会議始まるから資料は僕が急いで印刷したからいいけど君遅刻だよ?」 「え!?」 携帯を見るとたしかに9:55だ。会議まであと5分。僕自身もまだパジャマで寝癖のついた髪のままベッドにいる。携帯のアラームは全て止められている。 どうやら僕は起きたつもりで眠っていたらしい。準備して会社に行けたのは夢だったのだ。にしてもリアルだったなぁ。アラームもちゃんとなってたし、アラーム止めたのだけは現実だったのか、、、遅刻確定だ。思わず笑ってしまう。どうせ会議には遅刻なのだから夢で過ごしたみたいに優雅に朝を過ごしてみよう。そう思いながらベッドから起き上がった。
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