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「そう、すごいよね。その魔法はひとときの夢なの」
つづりは静かに話し続ける。
「それからね、花火もそうなの。華やかだけどそこからあ、と思うまに消えてしまう。でもそれが美しいの。ちらちらと散っていくまで、最後まで夢を見せてくれるんだよ。線香花火なんて小さいけれど、あの散っていくまで、最後までが物語なの」
そこまで言うとふ、と一呼吸置いた。みどりはその自分とは違う新しい視点に新鮮さと、やはりつづりといるのは面白いと感じていた。
「花火かぁ。私はどっかーんと元気に打ち上がる花火が好きだなぁ。夢っていうのは考えたことがなかった。でもたしかに一瞬だもんね。そう思うとひとときも目が離せなくなっちゃう!」
みどりはまるい目をきらきらさせて元気な、最後の方はボールが弾むような声でそう答える。つづりは「ふふ、ほんとだね」と笑った。
「ねえ、わたあめ食べに行こうよ」
そう言ってつづりがみどりの手をそっとつかむ。青空色のスカートが夜風に吹かれてふわりと揺れた。
二人は手を繋いだままわたあめ屋へと向かう。静かな空気が二人の間を通る。屋台までたどり着くとどちらともなく手を離し、「わたあめ一つお願いします」とそれぞれ注文した。
「甘い」
みどりがそっと呟く。その顔はわたあめが溶けていくようにそっとほころんでいく。
「本当だね。私やっぱりわたあめって好き。甘くて柔らかくて幸せをお菓子にしたみたいだし、わたあめと一緒に心に残ってた嫌なことも全部溶けていっちゃいそうだもん」
つづりはそう言いながらふふっと笑う。その姿は屋台の明かりに淡く照らされ、夜のヴェールを被った色とりどりのセロハンがちらちらと瞬くような幻想さを纏っていた。まるでお祭りの魔法が見せる存在かのように。
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