先生

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その理由の一つがこれだ。 子どもたちを教室において、職員室に駆け下りてくる。 ひと昔前までは廊下で当該生徒の事情を聞いていた。 今回のことも妙子に詳しく話を聞き、昼休みに教室にいた児童を割り出し、何か見ていないかを聞き、目撃者をなんとかして探し出していたはすだ。 しかし、今の時代は違う。 職員室に戻り、校長の机に置いてあるテレビのリモコンを取り、そこらへんに置いてあるパイプ椅子をつかんで広げ、どっかりと腰を下ろした。 テレビの電源を入れて、早戻しボタンを押す。 「お、先生。事件ですか?」 授業がない理科専科の棚橋先生が話しかけてきた。この先生は担任を持っていないことをいいことにいろいろなところから噂を聞きつけて、そこらへんにばらまく癖がある。だから、あまり未確定情報は渡したくない。 「まあな」 冷たくそれだけ言うと、棚橋先生は気まずそうにそそくさと離れていった。 こっちは子どもたちを放置してここにきているんだ。できるだけ一分一秒無駄にはできない。 2人が言っていた時間、昼休みに着替えた時間までビデオを巻き戻す。 そこから再生ボタンを押し、俺はじっと画面を見つめて探した。 今の時代、学校にはいたるところに防犯カメラが設置されている。
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