1.ペア

11/14
前へ
/183ページ
次へ
「そこでも入る?」 てっきり人気(ひとけ)のない所へ連れていかれると思っていたのに 誉田が指差したのはファーストフード店だった。 「ふ!?」 「……何?」 「いや、結構人間が多いなと思って」 「まあ、そうだね。それなりの混雑だね。今日は一先ず計画だけ立てよう」 なるほど。私は今日は()られない。 うーん、それなら。ダイエット気にせずに食べよう。あと何日生きられるかわからないのだから。 涼しい店内で座っていたら、誉田が席まで運んでくれた。紳士だ。の。中身はアレだけれど。 ソーダ水の上にソフトクリームの乗ったフロートを先がスプーンになったストローでつつく。 誉田が飲んでいるのは、まるで鮮血のような赤い……ブドウジュース。 あらそう。コーヒーとか飲みそうなのに。 などと考えていたら 「美味しそうだね」と言われる。 「あ、美味しいよ。一口いる?」 「いただこうかな。じゃあ、こっちもどうぞ」 誉田が向けてくれたブドウジュースに刺さったストローから(なぜか誉田が手に持ったまま)一口飲む。おお、ブドウ!果汁100だな。濃厚だ。 私が飲んだのを確認すると私の口からストローを外す。 じっと見てくる誉田に、あれ?と思い 「ソーダとソフトクリームどっち?」 と聞いた。 「ソフトクリーム」即答した誉田に少し大きめの一口を掬って差し出した。 「うん、美味しいね」 「うん、そっちも美味しかった」 ……って、何これ。カップルみたいなことしてる場合じゃない。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

628人が本棚に入れています
本棚に追加