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何自然に差し出してるんだろう、私も。
冷静になると恥ずかしい。制服を着たどこかの女子生徒の
「あの人格好いい」なんて声が聞こえてくる。そうだった。誉田は格好いいんだった。
「いや、でもめっちゃ彼女とイチャついてんじゃん」とか聞こえてきて、どうか彼女たちに私が不釣り合いだとケチョケチョに言われませんようにと願う。もうすぐ死ぬのに不快な思い出は少ない方がいい。
……イチャつく?イチャついてるように見える!そうか、そうだよね。今のやりとり。
何考えてんだ、誉田。チラリと誉田を見ると
「あれ、まだ飲む?」とストローを向けられてぶんぶん首を横に振った。
そうだ。映画とかでもそう。イチャイチャカップルは惨殺されるとパターン的に決まってる。って犯人ストロー差し出して来た誉田だけど。
「細川さん?」
「あ、はいいぃ!」
「…………えっと、決めない? 何をするか」
「ほ誉田は、死体が見たいんでしょ!?」
動揺してどもるし、呼び捨てにしてしまった。つい。そして自らフラグを立て直してしまった。
「急に、そんな感じ? てか死体とか、案外怖いこと言うんだね。スタンドバイミー?」
「…………いや、言ったじゃない。死体って」
「ああ。真に受けたの? あー、まあ冗談でもなかったけど……」
冗談!では!なかった!
やっぱり!!
恐怖でこわばる私に
「でも、楽しいかもね」と、笑ってみせた。
楽しいのはお前だけだ。
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