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この日も部室に生徒は私一人。
それはそうだろう。夏休みの初日から連続でわざわざ出てこないだろう。
昨日も今日も。
「ねえねえ、清夏ちゃん昨日さあ、誉田くん迎えにきてなかった!?」
「アキちゃん、ゴシップしてないで仕事しなよ」
顧問の阿木先生はまだ若い女性の先生で20代後半くらいだろうか。で、私がこの部室にいるお陰でここで仕事が、出来る、らしい。
「いやいや、あのイケメン誉田くんでしょ?
ああ、うらやま! 」
「無理に若い言葉使わなくてもいいです。ついでに、ずっと付き合ってくれなくてもいいってば」
「いいの、いいの。 職員室いたら後ろ通る度にチラチラ画面見てくる先生いて息がつまるーっての」
「先生サボらないで~」
「あはは、まあね。何で毎日部活に顔出してんの? 清夏ちゃん。家庭で内紛でも起きた?」
……先生にあるまじき……
「ちょっと、ね」
その“ちょっと”の訳を詳しく聞きたそうなアキちゃんにため息ついて
「誉田くんとの約束を断りたくて、毎日部活だって言っちゃったのよ」
「あらぁ、あらぁ、あらぁ」
もう鼻の穴膨らみまくりのアキちゃんに、「あの人変わってるんだもん」とだけ言った。
好奇の目を逸らすのに「色恋沙汰は全くない」
と、伝えたのに、「わかる、あれだけ格好いいとね、そうやって片思いにも予防線張っちゃうよねっ」
……なぜ私が片思いしている設定なのか。
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