1.ペア

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1.ペア

2年生になって初めて同じクラスになった、松下陽葵(ひまり)のところには、いつものように日野陽太くんが来ていた。 陽葵はクラスでも派手で目立つタイプだった。将来は美容師になると言っていて流行りに詳しいし、お洒落だし、髪型、いつも可愛いしそれはとてもぴったりだ。向いてると思う。 同じく派手で目立つタイプの日野くんは、陽葵にぞっこんらぶ(たぶん、死語)。 「日野くん、陽葵のこと好きだねえ」そう言ったら、嬉しそうに「うん」って言った。 うわわわ!認めた!しかも満面の笑顔。子犬みたいな人。 いいなあ、陽葵。単純に羨ましい。それなのに陽葵は「うざーい」なんて平気で言うのだ。 日野くんはそんなことを言われてもお構い無くにこにこしている。「バカなんだよ」陽葵は言うけれど、日野くんがバカではないこと、私は知っていた。だって、陽葵のヘアスタイルがちょっと違うと直ぐに気がつくし「可愛いね」って口に出して、陽葵をいい気分にさせる。それに、陽葵が熱をあげている誉田昂良(たから)くん(どこがいいのか、私はさっぱり)と陽葵が話せるように、時々誉田くんをそれはそれは自然かつさりげなく陽葵の方に誘導していた。 ブルーリボン賞ばりの演技力に、自分の気持ちを押し殺して陽葵へのアシスト。なかなか出来るものじゃない。愛が深い。私、日野くんは天才だと思う。だけど、みんなが笑ってくれるようにバカな振りをしているの。人を笑わせるってすっごい難しいのに。 だから、日野くんは能鷹隠爪(のうよういんそう) 陽葵が言うように、単純明快より複雑多岐。 今、私(たち)の間で四文字熟語が流行っている、のだ。
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