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「このくらいかな……と。彼女いたり、もしくは好きな人くらいはいるかもしれないけど」
「何の名簿?」
「細川の、恋の相手」
!?
「どういうこと!?」
「恋がしたいんだろう? だから校内の人気がある男子を挙げてみた。彼女の有無は知らない。……ただ、細川の好みは考慮したつもりだ」
「ええ!? 意味わかんない。私の好み!?
何でそんなの誉田が知って……ん……の 」
……あ。
ちょっと聞き取れた名前を思い出してみる。サッカー部キャプテン諏訪先輩。バスケ部福沢先輩、テニス部は加賀先輩と林くん、吹奏楽部入江くん……
知らない人もいるけれど、ちょっと有名な人もいて……ああ。モロ、わかってしまった。
「……考慮ってなんか日野くんぽい人……でしょ」
「そう、愛想のいいタイプで、それから、校内でモテる人も組み込んだよ。時間貰えたら、彼女の有無も調べるけど?」
「い、いや、いい! いい! いいから!」
必死に断って、日野くんの事を持ち出されたことで多分顔も赤いだろうけど……
「確かに、夏休みとなるとそう接点もないし芽生えるものも芽生えないかもしれないなあ」
「いや、そんな事もないよ。恋に落ちるには一瞬っていうし、ほら、一目惚れ……とか?」
もくもくした白い雲。強い西日に温められた、温い空気が私と誉田の間を抜けていく。
目があったまま、立ち尽くす私に、ふっと誉田が目元を弛めた。
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