2.クセモノ

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「……今さあ、したり顔で笑ったよね」 黙っていられなくなって、誉田に追い付くと前に立って除き込むように顔を伺った。 「いや、ちょっと」 「……何?」 やっぱり、私をどうにかする気なのではと疑う。 誉田は一瞬目を見開いたあと、すっと私の首元に手を伸ばす。 「ひっ」 首を絞められるのかと慌てて後ろへ仰け反った。 そんな私を見て、誉田は肩を震わせ、ついには声を出して笑った。 「あはは!」 部活帰りの生徒が何人か通りかかり、まだ正門近くであること、こんなところで首は絞めないだろう。あと、何か、からかわれたのだろうと悟った。 「……『だから』」 「うん? 『だから』?」 「さっき、細川が『だから』って言ったのが一瞬“昂良(たから)”に聞こえて、また呼び方変えたのかって勘違いして恥ずかしかっただけ」 誉田はそう言ってまた歩きだした。あ、“したり顔”じゃなくて照れ顔だったのか。だから、早足で……。 慌てて私も誉田に並んだ。じゃあ、手を伸ばしたのは何だったのだろうか。 「細川さあ、陽太が言うように『切り刻む』のは俺はしないと思う。夏場は腐敗が早そうだしね。綺麗じゃないだろ? 綺麗なのはやっぱり……凍死かな? 夏には無理だろうから、大きな冷凍庫にでも入れちゃえばいいのかな」 立ち止まる私に、誉田はくくっと喉を鳴らした。
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